2015年2月11日水曜日

オアハカの民芸品「アレブリへ」

こんにちは。

メキシコは民芸品大国ですが、オアハカはとりわけその種類が豊富な気がします。その中でも代表的なのが「Alebrijes」(アレブリへ)。

(出典:Wikipedia)

簡単に説明するならば、「カラフルな動物にエキセントリックな模様で絵付けされた木の置物」と言ったところなのですが、オアハカではいたるところでこの「アレブリへ」を見かけます。一言で「アレブリへ」といっても、道ばたで売られているようなものから美術品のような扱いになっているものまで、そのバリエーション(質も値段も)は様々です。デザインや色使いなども地域によって違っているのか、本当にいろいろあります。

なんでこんなにもバリエーションがあるのだろうと不思議に思ってアレブリへの歴史について調べてみました。調べてみるとその歴史は意外と浅く、創始者の名前までわかってしまったのでびっくりしました。民芸品や工芸品のイメージはというと、いつから作られ始めたかはわからないけれど、代々脈々と伝わっているものというイメージだったからです。

Pedro Linaresというメキシコシティのパペルマチェ(「張り子」のような技術)の作家が病に倒れたときがその始まりです。彼は30歳のときに病に倒れ、病床で不思議な夢を見ました。森の中でゴツゴツした石や雲が動物に次々と変化していくというものでした。それらの動物は、羽の生えたロバや角の生えたニワトリなど見たことがないものばかりで、「アレブリへ!!!!」と叫んでいるというものだったそうです。Pedroは回復してから夢の中で見たその不思議な動物たちを再現することにしました。それが、アリブリへのはじまりなのだそうです。それが1936年のことなので、アリブリへの歴史は80年に満たないことになります。

(出典:can@más)

Pedroのアレブリへは紙を使って作られました。それがやがてクエルナバカのギャラリーや、ディエゴリベラやフリーダカーロと言った画家に注目され始め「アレブリへ」が世に知られていくようになりました。

1975年に、英国人のJudith Bronowskiのドキュメンタリー映画でも取り上げられ、1980年代にはアメリカで行われたワークショップの巡回展示会にPedroも招待されました。そのワークショップにはPedroの他にオアハカのSan Antonino Arrazola(サンアントニーノアラソラ)出身のManuel Jiménezも参加していました。オアハカのサポテカ族には木を動物の形に削る(主にコパルの木)という伝統がプレヒスパニック時代からありました。宗教的な行事に使われていましたが、20世紀にはいっても子供のおもちゃとしてそれらの木彫りの人形が使われていたのです。その伝統にPedroのデザインが取り入れられて、木に絵付けがされる現在のアレブリへが生まれたのです。今「アレブリへ」として広く知られている原型です。今広く普及している「アレブリへ」はたった35年前に始まったばかりで、とても若く新しい部類の民芸品だということがわかり驚きました。

(サンマルティンティルカヘテのアレブリへ 出典:México descocido)

(サンアントニーノアラソラのアレブリへ 出典:Travel by Mexico)

その後木に絵付けされるアレブリへは、San Martin Tilcajete(サンマルティンティルカヘテ)やLa Unión Tejalapan(ラウニオンテハラパン)などオアハカの各地に広がったそうです。そしてそれぞれの街で独自のデザインやスタイルが確立されていくことになります。Tilcajeteでは街の収入源となるまでに大きな産業に成長しました。今は、オアハカを代表する民芸品になっているのはそういう経緯があるのです。

アレブリへによっては、いくつかのピースで構成されているものもあります。1つの木からすべてのピースを切り出すので、ピース同士はぴったりとはまるのだそうです。相当高度な技術が必要とされるので、すべてのアレブリへがそうだというわけではないようです。アートとして高められていくアレブリヘがある一方で、お土産物用に質の良くないものが量産されている一面もあります(質が良くないけど、ゆるゆるした雰囲気が妙につぼにはまってしまったりもします……。ゆるいって、ずるい。笑)。伝統工芸・民芸として定着するまでに一大産業になった面もあるので、今後アレブリヘがどのような道を辿っていくのかとても興味深いところではあります。

とはいうものの、作り手がそのときの気分で絵付けをするアレブリヘの色使いや奇抜なデザインは二つとして同じものはないのでお土産屋さんでもアートショップでも見て回るのはとても楽しいです。一点一点手作りなので、同じ形をしていても顔の表情は微妙に違うので醸し出す雰囲気も変わってきます。そして、直感的に自分が「いいなぁ」「好きだなぁ」と思ったものは手に入れるのが◎だと思います。次に全く同じものに出会える可能性はほとんどないと言っても過言ではありません。

さて、オリジナルアレブリヘは紙だったと前述しましたが、紙のアレブリヘはその後どういう経緯を辿ったのかというと、現在では毎年「巨大アレブリヘパレード」がメキシコシティで開催されています。こちらは、メキシコシティにあるMuseo del Arte Popularが主催で2007年から開催されているそうです。素材も、紙が使われたり木が使われたりさまざまなようです。

(出典:JOT DOWN)

写真を見ていると、とにかく大きい!!!そして、デザインもめちゃくちゃユニークでど迫力です。これは生で見たらかなりインパクトがあるだろうからいつか生で見てみたいところです。

オアハカにあまりに当たり前にあるアレブリヘですが、調べてみると実はまだまだ過渡期なのかな??とも思ったり、始まりや広がりのルーツも知れたので、それをふまえてアレブリヘで有名な街を訪れてみるのも楽しいそうだな、とさらに知りたいことが増えたような気がします。一つの謎が解決すると次の疑問がわいてくるというのは、アレブリヘに限らず、メキシコという国自体がそのような性質を持っているような気がします。

えらい長い文章になってしまいましたが、オアハカに来られたらぜひともアレブリヘを見て回ってくださいね。

それでは、よい一週間をお過ごしください。

Instituto Cultural Oaxaca
日本人スタッフ あみ

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